ASAHIネット(
[URL]のjouwa/salonからホットコーナー(
[URL] )に転載したものから。
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加藤さんから。
いろいろとインスパイアされるものが多い、刺激的なメールありがとうございます。
--- ここから ---
中村様
はじめまして。某書店に勤務する一読者です。
Show's Hot Corner時代から楽しく拝読しています。
最近、中村様の関心が、意識(脳)と身体性へと惹かれていらっしゃるようで
すので、僭越ですが、自分が読んで興味深かった本をご紹介してみます。
(一冊は自社本なので宣伝行為になってしまいますが。…って「某書店」とか
名乗る意味がないですね(^^;)
○ユーザーイリュージョン―意識という幻想
ノーレットランダーシュ,トール【著】
紀伊国屋書店 (2002/08/31 出版)
[URL]
○剣の精神誌―無住心剣術の系譜と思想
甲野 善紀【著】
新曜社 (1991/04/20 出版)
[URL]
自分は剣道をやっていたのですが、剣道には「勝ちに不思議の勝ちあり、負け
に不思議の負けなし」という格言があります。
また型稽古や反復練習も重視されます。
型はなんのためやるの、というとよく「咄嗟に考えずに技が出るためだ」と言
われますが、「条件反射で技出してたら、フェイントで誘導されたら終わりじ
ゃん」と考えてました。
でも、そうではないらしい。もともと、脳内では複数のエージェントが動いて
いて、判断、計算、行動指示などをさまざまなレベルでやっている。
重大案件は最後に意識にGOサインを求めに来るが、実はその時点ではすでに筋
肉は動き始めてる。
仕事でいえば、各部署に根回しをしてから最後に上司に決裁を求めてきている、
この上司が意識ということらしい。
ところがスポーツや格技だとそれでは間に合わない。だから上司の決裁をすっ
飛ばして現場で判断できるように鍛えよう、ということらしい。
剣道で竹刀を振り上げ振り下ろすにかかるのは0.5秒くらいでしょうか。
しかし全国大会ではスローモーションで見ると1秒以内に一方が面狙い→小手
狙い→面狙いに切り替え、他方がすべて防いで切り返し面で逆に一本とってい
たりします。で、皆口々に「体が勝手に動いた」「後から思い返すとスローモ
ーションのように見えた」という。
これはすべて現場判断でやっており、上司である意識には後から報告だけがい
っている、と考えればつじつまが合います。
ユーザーイリュージョンはそういう話を「自然の情報量」と「リベットの実験」
から説き起こします。
剣の精神誌はそれをつきつめた剣術がどうなるかを示します。
(著者である甲野善紀さんは多分前者の理論は知りませんが。)
そこで興味が湧くのは「では意識が上司でしかないとすれば、現場はどうすれ
ば鍛えられるのか」というメソッド論です。
これは私の考えですが、それは上司が部下を鍛えるのと同じ方法になる。
すなわち能力を少し超える仕事を次々と投げて、結果に対して指導する、とい
う間接的手法しかない。
数学の問題で解法が浮かぶのも、将棋の次の一手が浮かぶのも、必ずしも手順
を意識が説明できる訳ではない。
ひたすら問題を投げて案が出てくるのを待ち、意識で検証し、間違ってたら次
の案を待つ。そのうち間違った案が出て来にくくなる。
中村さんのいわれる「身体化が大事」「手を動かすことが大事」「読んだだけ
で能力が向上するわけがない」というのはこういうことでしょうか。
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