GRAPE本、伊藤智義著「スーパーコンピューターを20万円で創る」
2008-02-08


ASAHIネット([URL]のjouwa/salonからホットコーナー([URL] )に転載したものから。
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 今から約20年前、手作り、かつ、たった20万円で当時のスーパーコンピュー
タに匹敵する計算能力をもつコンピュータを、コンピュータを作ったこともな
い素人が作ったというので大いに話題になったGRAPE(グレープ)。
 GRAPEプロジェクトを発案した杉本大一郎氏から、突然、開発を命じられて
電子回路や半田付けから勉強して、悪戦苦闘の末、GRAPEを作り上げた伊藤智
義氏が当時のことを書いたのが、
[URL]
伊藤智義著「スーパーコンピューターを20万円で創る (集英社新書 395G)」
です。
 GRAPEが必要とされた当時の天文学の状況、GRAPE開発の秘話を交えて、当時
のことを綴っています。伊藤氏自身の青春回顧録にもなっています。
[URL]
ロボット、画像認識、音声認識関連本
で書いたように、いま、パソコンを自作することが非常に薄っぺらで軽いもの
になっています。
 しかし、GRAPEの開発では、自分で回路図を描いて、部品を集めて、半田付
けをして、基本ソフトを書いてと、全部、ほんとに手作り。
 いかにして、たった20万円でスーパーコンピュータが作れたか。そのトリッ
クなどは、本書を読んでください。
 苦労は多かったけれど、いまより、ミョーに楽しそうなんですよね。読むと
子供のころ初めて半田付けして半田の煙にのけぞったり、エッチングでプリン
ト基板を作ったら、パターンの線がちょっとぎざぎざしてたり、エッチング液
をどこに捨てていいかわからず、庭の隅に捨てたら、そこらの草花が全部枯れ
て、父からそれは雑草が生えているこの辺に捨てろと叱られたり。\(^O^)/
 いろいろ自分のことも思い出して、読んでいて懐かしくもわくわくしました。
 伊藤氏は、ヤングジャンプに連載されていた「栄光なき天才たち」の原作者
としても知られていますが、これが、在学中のことで、学生なのに、一時、年
収1000万円以上あったそうですが、それを捨てて、いまは研究者になっていま
す。

 一点、不満を述べるとすれば、自伝的内容であるにも関わらず、三人称で書
いてあること。これは、おれは、物書きとして反則だと思う。
 というのは、GRAPE開発チーム内での人間関係、自分と他の人とのあつれき
なども書いているのに、そしてそれは当事者としての主観でしかあり得ないの
に、一人称で書かずに三人称で書いているから。これでは、客観性を装ってい
ると批判されても仕方がない。
 そこに非常に違和感を感じる。伊藤氏は、ノンフィクション作品として楽し
んでほしいと冒頭で述べているが、作品であるならば、なおのこと重大な欠陥
だと、おれは思う。まさか、ノンフィクション作品は三人称記述という単純な
思い込みで、三人称を採用したとは思わないが。
 当然、一人称でもノンフィクションは書ける。二人称はノンフィクションだ
ろうがフィクションだろうが難しい。というか、苦労の割に効果がわからない。
少なくとも、おれには。
 その他は、当事者しか知りえない秘話もあり、エピソードのつなぎ方もこな
れているし、満足度が高いだけにかえって気になりましたね。

 いま、GRAPEはどんどん進化して、GRAPE6になっています。
[URL]
GRAPEプロジェクト
[URL]
GRAPEプロジェクト
 この2つは同じ内容のようですね。あれ、後述の講義資料では、
[URL]
GRAPE公式サイト

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