矢川元基編著「パソコンで見る流れの科学―数値流体力学入門 (ブルーバックス)
2007-12-30


ASAHIネット([URL]のjouwa/salonからホットコーナー([URL] )に転載したものから。
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[URL]
蔵本由紀著「非線形科学 (集英社新書 408G)」
で紹介した
[URL]
蔵本由紀著「非線形科学 (集英社新書 408G)」
 この本の中で、とても気になったのが、カルマン渦。この本には不思議で興
味深い現象がいろいろ出てきますが、カルマン渦も見た目もきれいだし、不思
議だし、興味が湧いたのです。

参考:
[URL]カルマン渦

 カルマン渦は、流体力学で詳しく調べられているというので、さっそく探し
たら、講談社ブルーバックスにありました。
[URL]
矢川元基編著「パソコンで見る流れの科学―数値流体力学入門 (ブルーバック
ス)
です。
 これは、流体力学の基本方程式であるナビエ・ストークス方程式をコンピュ
ータで数値的に解く話の解説です。
 といって数式はほとんどなく、コンピュータで方程式を数値的に解くとはど
ういうことか。コンピュータによるシミュレーションとはどういうことをして
いるのかといったことを、初歩から丁寧に解説してあります。
 矢川元基編著となっているように、複数の専門家が各章を担当しています。
そのため、記述のレベルにでこぼこはありますが、いろいろな手法の解説が展
開されています。
 これでも大学では情報系だったので、有限要素法の名前くらいは知っていま
したが、ほかにもいろいろあるのね。粒子法、格子ボルツマン法やらなんやら。
 第3章には、「カルマン渦列の謎に迫る」という、ズバリの章もありますし、
第7章の格子ボルツマン法でも、カルマン渦のシミュレーションがあります。
 この本で特筆すべきは、CD-ROM付きであること。
 CD-ROMには、各章に応じたシミュレーションのソフトや、シミュレーション
結果を可視化したアニメーションを収めてあります。
 これがきれいです。短いのが残念なくらい。実際にその場で読者のPCで動か
すものもあって、いろいろと数値を変えてシミュレーションができます。
 ぼくは、第7章のソフトがJavaで書いたソースコードも入っていて一番気に
入りました。ソースのコメントも思わず笑ったりしてね。
 ほかにも、いろんな状況の流体の動きをシミュレートしているんですが、マ
ントル対流を5000万年分シミュレートしたものもあって、地球大進化を思い出
しました。
 奥尻島を襲った津波を再現したものもありました。もっとゆっくり動きがみ
たいと思っても、一瞬なのが残念でしたが。
 カルマン渦って不思議ですね。レイノルズ数という慣性力と粘性力の比を変
えるといろんなことが起きますね。飽きない。
 オビなどの宣伝文句を並べると、
--- ここから ---
シミュレーションで見た「流れの世界」
スーパーコンピュータで作ったCG映像や独自のシミュレーションソフトを使っ
てカルマン渦から5000万年間のマントル対流まで映像化、見たことのない不思
議な映像があなたのパソコンで楽しめる。

迫力のCGムービー18本とプログラム3本をCD-ROMに収録

●あなたのパソコンでカルマン渦が動く!
●5000万年間のマントル対流が33秒のムービーに
●地下鉄駅構内の風の流れ
●飛行機はなぜ飛ぶのか?
●北海道南西沖地震の津波を再現
など、ほかでは見ることのできない映像が満載
--- ここまで ---

 流体、流れの不思議に興味がある人、数値計算によるシミュレーションに興
味がある人にはちょうどいい入門書だと思います。

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