Peter Seibel著「Practical Common Lisp」(Apress)
2005-09-16


ASAHIネット([URL]のjouwa/salonからホットコーナー([URL] )に転載したものから。
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[URL]
Peter Seibel著「Practical Common Lisp」(Apress)の紹介です。
 夏休みの宿題として、これを読もうと思っていて、8月に入って読み始めた
ら、滅法面白くてハマりました。何より構成と書きっぷりがいい。
 本書を一言で言えば、「Lisp 50年の叡智を、巧みな構成と筆致、実践的な
プログラム例で、おしげもなく詰め込んだ現代的プログラミングの解説書」と
言えます。

 著者のサイト、
[URL]
Practical Common Lisp
に行くと、HTMLで本書の全文が公開されていますが、本のほうが圧倒的に読み
やすいです。ぼくは最初はHTMLを印刷して読んでいましたが、本が来てからは、
やっぱ本はいいなと思います。
 本書の注は面白い。それが本では脚注になっていてすぐ読めますが、HTMLで
は章の最後にあるので行ったり来たりしなければならず読みにくいのです。そ
れから、本は索引があるけど、HTML版にはない。これも読みやすさに大きく影
響します。
 これだけでも本を買う価値は十分ありますが、やはり本という形になってい
ると所有欲も満たせます。

 著者のPeter Seibelさんは、第2世代のLispハッカーと呼ばれる人たちの一
人です。以前は、Perlでウェブサイトを作ったり、WebLogic(いまのBEA
Systems)の初期にもいてJavaでも開発していたけれど、Common Lispに出会っ
てすっかりお気に入りになってしまったそうです。
 でね、Peterさんのお父さんのエピソードがあって、お父さんは1980年代に、
ある会社で破綻しかかったプロジェクトを引き継いで見事成功に導いたそうで
す。当時はLispを使ったAI(人工知能)ブーム。それでお父さんはCMU(カーネギ
ーメロン大学)に行って、Lispのことを聞いて、Lispでそのプロジェクトを立
て直すことを決心して、成功したそうです。
 お父さんがLispに出会ったのが1980年代だもんなあ。その息子さんだもんな
あ。やっぱ、第2世代だよなあと。冒頭のエピソードだけで自分が年をとった
のがよくわかりました(泣)。

 さきほど紹介したPeterさんのサイトに行くと、本書の目次があります。こ
の目次を見るだけでも、Peterさんの本書に込めた願い、意気込みが伝わって
きます。
 それは何か。
 Lispは、John McCarthy先生がLispのアイデアを思いついてから、なんと早
50年、Common Lispの最初の規格ができてから20年、ANSI Common Lispになっ
てからでもすでに10年。広く実用的に使われ続けている言語としては、
FORTRANの次に古い言語です。
 古いゆえに、すでに時代遅れで死んだ言語だという偏見が根強いのです。
 Perlなどが中心的話題になっている今年のオープンソースやスクリプト言語
のカンファレンスでも、LispハッカーのPaul GrahamさんがLispのことを話し
たあとのセッションは、死んだ言語(Dead Language)のセッションで、トップ
がLispだったので大爆笑だったそうです。
 Lispは実際には死んでいません。その優れたアイデアのいくつかが、他のプ
ログラミング言語の中に換骨奪胎されたとはいえ、最近作られた言語でも遠く
及ばない面をいまだにもっている、現代的で先進的な常に進化し続けている言
語です。
 それから、Lispは日々の仕事には使えない言語という偏見も根強い。
 これはこれまでのLisp解説書にも責任があって、出てくるプログラム例は、
高尚な理論やアルゴリズムを記述したり、AI(人工知能)的なプログラム例が多
かったのです。そのため、そういう高尚なものしか書けない敷居の高い言語だ
と思われています。

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