繁栄の昭和。キリコと筒井康隆
2015-04-15


ASAHIネット([URL] )のtti/salon(筒井康隆会議室)からホットコーナー([URL] )に転載したものから。
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 書こうと思って、もう4ヵ月も経ってしまった。
 キリコのことを調べたり、筒井さんの昔の作品を読み直したりしてたら、あ
っという間。4月の新年度前にはと思ったけど、間に合わなかった。
 でも、なんとか、書く。

 まず、「繁栄の昭和」から。

[URL]
繁栄の昭和 単行本 2014/9/29
筒井 康隆 (著)

 どれも、魅力溢れる短編だが、やはり白眉は「高清子とその時代」。
 ベティ・ブープと共に、長らく筒井さんが追いかけている高清子。彼女の生
涯を追いかけた記録で、大変な労作だ。
 筒井康隆は、ベティ・ブープと高清子に、奥様である光子様の面影を追いか
けているという説は、実に正しい。
 筒井さんは、デビューまもなく長編「霊長類 南へ」を発表したとき、
「ライフワークをもう書いてしまった。あはは。この先どうしよう。あはは」
的なことをインタビューで述べたか、エッセイで書いていた記憶があり、当時、
「この作家、大丈夫か。めちゃくちゃ、面白いわ」
と思ったものだ。
「高清子とその時代」を読んでやっとわかった。
 わかってしまえば、なんのことはない。当然のことだが、筒井康隆のライフ
ワークとは、光子様を生涯愛し続けることだったのだ。かっこよすぎるぜ。

 さて、この作品集の中でも使われているが、日常の描写の中に、ひょいと超
現実的な描写を放り込む手法が、ぼくは大好きだ。
 「一族散らし語り」のラスト、お夏ちゃんが去っていくシーンなど、感動の
あまり、心のみならず体が震えるほどだった。
 不思議だよね。絶対に現実にはありえない描写なのに、こんなに感動するな
んて。哀切、愛おしさ、懐かしさ、いろんな感情が湧き起こってくる。
 超現実的描写だからこそ、現実を描写したものより、本質的な描写になって
いるからだろう。シュルレアリスム(シュールレアリズム)の凄みを感じてしま
う。

 ということで、ジョルジョ・デ・キリコである。
 ピカソが畏れ、ダリが憧れたといわれる画家だ。
[URL]
ジョルジョ・デ・キリコ −変遷と回帰− 今週、金曜日まで
で、
--- ここから ---
 なぜ、ここで紹介するかというと、「繁栄の昭和」を読んでいたころ、
このキリコ展に行き、筒井さんとキリコに通じるものがあると思ったから
です。そのことは、また、書きます。
--- ここまで ---
と書いたように、ぼくの中で、筒井康隆とジョルジョ・デ・キリコがシンクロ
してしまったのだ。

[URL]
ジョルジョ・デ・キリコ −変遷と回帰−

[URL]
日曜用美術館
謎以外の何を愛せようか
ジョルジョ・デ・キリコ
2014年11月23日放送 再放送:11月30日よる

 キリコは、シュルレアリスムの前駆、形而上絵画をひっさげて衝撃のデビュー
をし、シュルレアリスム運動のリーダーであるアンドレ・ブルトンが絶賛し、
ピカソが畏れ、ダリが憧れたという話になっていく。
 ぼくの中では、キリコのデビューの鮮烈さが、筒井さんがスラップスティッ
クSF(ドタバタSF)で颯爽とデビューしたときとシンクロした。
 筒井さんのデビュー当時、大変な美男子でもあったので、
「星新一が道を拓き、小松左京がブルドーザーで整地した道路を、筒井康隆は、
颯爽とスポーツカーに乗ってやってきた」
などと評された。

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