ウォッチメン
2009-11-01


ASAHIネット([URL] )のjouwa/salonからホットコーナー([URL] )に転載したものから。
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 久々に笹塚の江川さんのところに行ったら、「ウォッチメン」は好きだと思
うよ。観たほうがいいよと薦められたので、借りてきて、さっき、観た。
 単純なスーパーヒーローものの内幕の話かと思ったら、とんでもないね。
 これ、思弁的、文学的、哲学的な読みができる映画ですね。
 あるいは、映画の台詞に出てくるような、人類上最上のジョークとして読む
べきなのか。それもシニカルでブラックなジョークとしても。
 どっちにでも読めるけどね。
 なんにせよ、読み込める文学的読解力、映画的読解力があるなしで、この作
品、面白さ、楽しさが全然違うでしょう。文学的読解力、映画的読解力がない
と退屈でしょうね。
 いやあ、いい映画、紹介してもらいました。江川さん、ありがとう。

 笹塚の江川さん
[URL]
<笹塚十号坂商店街>ピープル
[URL]
ピープル江川映画日記

 特典映像をみると、原作コミックは、20年ほど前に出て、コミックは子供向
けというそれまでの欧米の常識を覆す大傑作で、SFのヒューゴー賞、ネビュラ
賞も受賞した作品なんですね。
 特典映像の自警団の話は深いね。スーパーヒーローって、結局、裁判を通さ
ず、自分の基準で勝手に悪人を裁いちゃうわけで、本来は問題だよね。ガーデ
ィアンズという自警団も現実にあるし、日本にもそれを真似た組織があるけど、
一歩間違うと大変な話だもんね。

 おれがこの映画に好感をもったのは、現実は複雑だということちゃんと語っ
ていること。コミックのスーパーヒーローの世界みたいに単純な世界はあり得
ない。複雑な現実を単純化してとらえてしまう愚かさがよく出ていること。ス
ーパーヒーローたち自身が、そのジレンマに苦しめられているんだよね。
 勝間和代のことをまた話題にして悪いんだけど、彼女の「政策」と称するも
のがお笑いで、彼女を「針の穴から覗いて、蚤の脳で考える」人と評したり、
あんなに本を読んでるのに世界観が貧しく視野が狭く人間としての思考力がな
いと思えるくらい考えが浅いのは、彼女には複雑さと向き合う力がないから。
 世界を単純化してモデル化するのは、最初はいいわけ。たとえば物理学も最
初はそうやった。でも、だんだんと現実をもっと忠実にモデル化できるように、
複雑なものを複雑な形で扱えるように発展してきたわけ。それをやってのける
力がないと、社会は発展しないし、現実は変えられない。
 でも、彼女を含め、カモリーマンビジネスをやってる連中は、単純化した思
考とあとははったりだけで、社会がわかったようなことを言って、人をだまし
てるんだよね。カモリーマンは、それに引っかかる。
 子供の理科離れが危惧される日本、文系がのさばって、理系を搾取して安く
こき使う企業、役所、政治がはびこる日本。これじゃ、先は暗いよね。

関連:
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ブラック・スワンのせいか、べき乗則、複雑系、非線型関係の本が売れてます
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Re: ブラック・スワンのせいか、べき乗則、複雑系、非線型関係の本が売れてます
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Re: ブラック・スワンのせいか、べき乗則、複雑系、非線型関係の本が売れてます その2

 関連して、
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将棋ネタ
で一言書いた、将棋世界200年9月号に載っている羽生名人の深い話のひとつ
が、こういう話。

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